エイチタス株式会社

“共創”を通じたソーシャル・イノベーション創出支援

2016.08.29

南島原ITナイト@東京Vol.1 実施報告

8/22(月)、中小機構TIP*S(東京・丸の内)にて「南島原ITナイト@東京Vol.1」を開催しました。 

このイベントは、今秋に長崎県南島原市で行うアイデアソン・ハッカソン「いなかソンin南島原」のプレ企画として、現地からゲストを招き、南島原の魅力を余すところなくお伝えするものです。主催は南島原市役所。長崎県内初の自治体主催ハッカソンとあって、プレイベントへの気合いも十分。 

…でしたが、当日は関東地方に台風が上陸。ゲストのみなさんは飛行機での上京を予定していたものの、朝から欠航が相次ぐ状態に。市の担当者のおふたりに至っては、一旦、飛行機が飛び立ったものの、関東上空まで来たところで無念の長崎空港引き返し。移動経路を新幹線に切り替え、陸路での長旅を敢行することに。

準備を進める会場では、来場者向けの配布物を用意。市から届いた荷物には、南島原の魅力を伝えるパンフレットのほか、南島原市の名産品「手延べそうめん」も。なんと1人3袋という大盤振る舞いに、多彩なレシピもセット。

現地からの情熱がひしひしと伝わり、我々スタッフの意気もあがります。

 都内でも鉄道などに乱れが生じたものの、嵐がやまないうちに申し込みが入る状況で、開場前の時間にも会場にはすでにご来場者の姿もあり、イベントは定刻を少々過ぎたところで無事、スタート。

 まずはエイチタス代表の原よりご挨拶と、本日のイベントの趣旨を説明します。

 「いなかソンin南島原」は、10月と11月の計2回、主に地域外の方々を南島原市に招待しての実施、というのが大きな特徴です。交通費・宿泊費はなんと主催者持ち!

 浮いた分は現地での色々な体験やふれあいに使って頂きたいという思いも込めております。

続いてゲストトークに移ります。

お一人目は、「洗濯ハカセ」の異名をとる神崎健輔さん。飛行機に搭乗の予定を急遽新幹線に乗り換えて、遠路はるばるのお越しです。

 神崎さんは南島原で、ご実家の老舗クリーニング店でご活躍されているのですが、そればかりでなく、なんと現地でITベンチャー「クラスタス」を立ち上げました。

役員3人は全員「神崎さん」で、唯一の社員はユーチューバー。アベノミクスで、折からの女性活躍推進の流れに乗り、社長には弟さんのお嫁さんの「神崎さん」が就任。ITがわからなくても、やりたいことを次々オーダーする社長の存在は、同社のサービスをスピーディに発展させる推進力になっているようです。

 現在は、Nexcy(ネクシー)というサービスでクリーニングのオンライン注文を受けています。

 すでに次の事業アイデアも構想しており、会場の方にだけこっそり、お話しされていました。ちなみに神崎さん、これまでITのお仕事はしたことがなく、全部独学とのこと。

 クリーニング店のPRも兼ねて自らを「洗濯ハカセ」と称し、お洗濯のHOW TOをブログで発信。時には、ブログの情報のおかげで自分でお洗濯できちゃいました、ということで、クリーニングがキャンセルになってしまうことも…。それでも、嬉しかったと笑う神崎さん。

 テレビに出ること、雑誌に載ること…を目標に掲げてブログを書くこと1年半、なんと目標は全て叶ったのだそうです。気になる方は「洗濯ハカセ」か「クリーニング馬鹿」でググってくださいとのこと。

南島原では、ITといってもインターネットくらいにしか思われてないのが現状。

ホームページの制作一つとっても、周りに聞ける人が誰もいない。そんな現状だったからこそ、南島原でITに取り組んだのだと、神崎さんは言います。

 今では取材が相次ぎ、このイベント翌日も東京で取材があるという洗濯ハカセ、神崎さんの不思議な魅力に、会場はぐいぐいと引き込まれていきました。

さて、そんな神崎さんのプレゼンの最中、今回のプロジェクトを企画した小関さんの姿が。飛行機引き返しから新幹線に乗り換え、実に12時間に渡る旅路でした。到着した小関さんに、来場者のみなさんからも惜しみない拍手が送られました。

 小関さんのプレゼンでは、南島原市の暮らしや産業、情報サービス雇用の実情についての報告がありました。すでに東京から複数のIT企業が、この南島原市にブランチオフィスを開設し、雇用を生み出しています。また、オフィスに学校の跡地を活用するなど、地域ならではの取り組みが始まっています。

ここでいったん休憩をはさみ、後半はエイチタス代表の原をモデレーターに、ゲストと会場を交えたトークセッションの時間です。

 神崎さんは、8年ほどのサラリーマン経験を経て、クリーニング店を継ぐまでのエピソードを披露。クリーニング士の国家資格をとるには、繊維を触って種類を当てたり、シャツにアイロンをかける試験では、アイロンのかけ方ひとつとっても、長崎ならではの独特の厳しさ、苦労があったようです。

 クラスタスでは、日本にまだ存在しない新事業を準備中とのこと。まだまだハードルがあるようですが、サラリーマン時代からプレッシャーをはねのけてきた経験が、新たな道を拓いていく。そんな予感を覚えさせるお話でした。

 小関さんは、地元で面白い事をやっている人には、積極的に支援していく姿勢のようです。田舎に住んでいる人ほど、実は田舎の良さがわかっていない。そんな環境の中だからこそ、田舎とITが繋がることの面白さがあるということです。

 小関さんがアイデアソン、ハッカソンという言葉に出会ってから3年ほど。
これを機会にいろんな方が現地に訪れ、地元の人との議論や触れあいを通じて、地域の問題解決に挑んでほしいと、胸の内を熱く語りました。

これを受けてエイチタスの原も、いなかソンin南島原への抱負を語りました。

 田舎でIT事業を行うこと自体は、パソコンとインターネットがあればできるはず。しかし実態として、情報産業はどうしても東京に集中しており、むしろ他の産業以上にIT分野のほうが一極集中が進んでいるのかもしれない。
そのような状況で、IT事業者が東京を離れたときに、どんな可能性があるのか、そして何ができるのか。

 南島原市で驚いたのは、東京の企業がすでに進出していること。
一体、南島原には何があるのか。そして何が彼らを惹きつけたのか。その謎をぜひ、現地でのアイデアソン・ハッカソンを通じて知ることができたら、と期待を露わにします。

また、会場には実際に現地に拠点を置き、すでに活躍されている会社の方も複数名いらっしゃっていました。

 東京から進出しているIT企業のセラクの持田さんに、お話しを伺いました。

手掛けているのは農業とITを結びつけるサービス。島原は坂が多くて、本来農業に向いてないと思われるにも関わらず、高い生産を誇ります。そうした南島原の土地に、IT技術を融合させることで、さらに面白いことが起こせるのではないかと思い、オフィスを置いているとのこと。

 続いて、ご夫婦でいらっしゃってくださった、デザイン会社ハッシュのお二人。

元々は横浜でお仕事をされていたのですが、奥様が島原出身ということで次第に南島原の魅力に気づき、進出。現在、デザインのお仕事でクラスタスと協業されているとのことです。

 その後も、都内でIT企業を経営する宮原さんから、現地で先行して開催したハッカソンの様子を、写真を交えて報告いただきました。

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こうしてアイデアソン・ハッカソンのイメージが膨らむと、南島原市への期待に胸を膨らませた会場の熱気も高まったところで、交流会へと移行。交流会では、現地グルメとして、日本酒やかまぼこも用意しました。

 かまぼこは、神田にある長崎のアンテナショップ「かきくけこ」から。台風のために流通が滞る中、現地から輸送されたばかりのかまぼこを、わざわざ届けてもらいました。日本酒は、県のアンテナショップから取り寄せた、南島原市の地酒を振る舞いました。

終了後も、「かきくけこ」に移動して二次会が遅くまで続き、台風の直撃で一時は開催が危ぶまれまたことが嘘のような、盛況のうちに終了しました。

 

前述のとおり、IT産業は事業者の多くが東京に集中をしています。地方では、地域の産業振興をはかるために、UIJターンによる人材の還流、地域での起業の促進、そしてITの利活用と、あらゆる施策が検討、実施されています。
どうしたら効果的な仕掛けを生めるか、お困りの自治体も多くいることと思います。

 わたしたちは、今回のケースも含め、次のように考えます。

 

 まず、UIJターンと言えども、仮に数人が移住したところで、それ自体は人口の増減に変化をもたらしません。ポイントは、その数人が、地域にどんなインパクトをもたらすかという点にかかってくるでしょう。

 ITは、人、モノ、カネ、情報の流れに変革をもたらす手段です。クラスタスの神崎さんは、WEBでオンラインのクリーニングサービスを仕掛けたことで、東北での大口顧客や、さらには北海道からも注文を受けたそうです。長崎の半島の先にある地域の商店が、ITで起こした変化です。

 どんな小さな田舎でも、こうした萌芽につながる要素は必ずあります。クラスタスの神崎さんは、都会でのサラリーマン経験を積んだのち、家業を継ぎました。外の空気に触れた次世代のプレーヤーが、新たな挑戦を起こした好例です。

 彼がさらに優れたエンジニアを外から仲間に加えることができたら、さらに魅力あるビジネスが、スピーディに進み始めることでしょう。都会で有望なスタートアップを探している投資家も銀行も、彼のような存在が地域で芽吹き始めていることに、まだ気付いていないことでしょう。

 

 また、役所の小関さんも、東京のITエンジニアが集うコミュニティと積極的につながり、彼とつながった人や起業が「まずは行ってみるか」と現地に足を運び、地域への進出をはかっています。

 こうした仕掛けは、決して偶発ではなく、必要なプレーヤーを丁寧に掘り起し、化学反応を起こせるきっかけの場を創ることで、継続的なアクションを生み出します。

 

 今回の南島原のアイデアソン・ハッカソンの事業も、そのひとつ。まずは現地にエンジニアやクリエーターなど、テクノロジーで価値を生める人々に現地を体験してもらい、地域に関わりたい人を増やしていきたいという狙いがあります。

 集まる人々は、主に首都圏、関西などの都会から。わたしたちがプレイベントを東京で行ったのは、本番イベントの説明会という趣旨もありつつ、南島原×ITというテーマに関心を持つ人々のコミュニティを、東京に作りたいという狙いもありました。

 東京で、特定の地域を応援するITエンジニアのコミュニティを作るというアプローチは、わたしたちがたびたび取る手段ですが、これを取り入れて地元IT企業のアピールや、新しい活動を起こすきっかけに活かしている自治体も複数、現れています。

 単に出会うだけに留めず、地域をフィールドとして、都会の人々を巻き込み、具体的に共創を手掛けてみる。それによって、都会と地域の双方が新たな視点を得て、ビジネスの発展に活かす。そんな流れを、わたしたちは南島原をはじめ、全国で拡げていきたいと思っております。

 南島原で描くモデルも、その先駆を為すひとつと位置付けて取り組んでおります。

 

 「いなかソンin南島原」は10/21(金)~23(日)にアイデアソン、11/25(金)~27(日)のハッカソンの2部構成。 お申し込みは、いなかソンin南島原オフィシャルサイトからお願いいたします。