エイチタス株式会社

“共創”を通じたソーシャル・イノベーション創出支援

2019.11.29

フューチャーデザイン・プロジェクト~Future Design私たちが感じる未来~ vol.2 エイチタス特別顧問 蓮見×株式会社Join for Kaigo代表取締役 秋本可愛さん【前編】

2019年エイチタスの特別顧問に就任した、前札幌市立大学理事長・学長で、現札幌市立大学/筑波大学名誉教授の蓮見孝と新しい分野で活躍する次世代リーダーとの対談企画の第2回目は、秋本可愛さんをゲストにお迎えしました。秋本さんは「介護から人の可能性に挑む」をミッションに、超高齢社会を、高齢者にとっても、支える世代にとっても、よりよい社会にしていくことを目指して、介護・福祉領域の人事の学びの場「KAIGO HR」や超高齢社会を創造的に生きる次世代リーダーのコミュニティ「KAIGO LEADERS」を運営する株式会社Join for Kaigo代表取締役で介護にまつわる「人」を応援しています。

蓮見が学長を務めていた札幌市立大学は、デザイン学部と看護学部があり、両学問が連携・共同して「教育・研究・地域貢献」を行い、異分野連携により可能になる、人々の暮らしや社会に新たな価値を創造する活動を実践している大学です。また2002年、筑波大学附属病院にて筑波大学芸術系と病院との協働によるアート・デザインプロジェクトを開始した草分け的存在でもあります。そんな2人の対談から見えてくる「介護の未来」を3回に渡りお伝えします。

PRESENTメンバー・ゲスト集合写真

蓮見:本日はお越しくださり、ありがとうございます。秋本さんが立ち上げた、Join for Kaigo(ジョイン フォ カイゴ)パンフレットを拝見すると、明るいですね。大変な仕事なのに。

秋本:大変ですが、志を持ってこの仕事が大好きでやっている人たちが実は結構いて、そういう人たちがその志を閉ざさず、働ける環境を広げていきたいなと思って、頑張っています。

蓮見:たしか2000年だったけれど、介護保険制度が始まった時に一つの転機がありましたよね。その辺りはどうなのですか。

秋本:介護保険始まった時、私はまだ10歳だったので、その頃は正直、介護に興味がなかったです(笑)。

蓮見:介護が制度化されたということですよね。でもそれまで日本全国では、地域ごとに自由に活動していて、日本は介護の先進地みたいなところもありましたよね。

秋本:宅老所などですよね。

蓮見:地域サービスの質を上げようとしていた流れが、全国一律保険適用になり、急に変わった感じがします。その前と後では随分と”介護の質とイメージ”が変わったのではないですか。

秋本:蓮見さんは、介護保険制度が始まる前のほうがよかったと思われますか。

蓮見:進んでいる所は進んでいたし、遅れているところは遅れていました。だから、進んでいるところは頭打ちにされて、遅れているところがちょっとボトムアップされました。ボトムアップはいいけれど、先進地がすごくダメージ受けたのではないかと思います。一律化されていく中で、自由に総意工夫する部分が減っていき、自分達のやり方を考えたり、実践することが難しくなった気がします。

秋本:そうですね。自由度が高かった時にできていたのに、難しくなったことがありますね。

蓮見:そういう状況の中で、若い介護職の人たちが生きがいや働きがいを持って、これからの社会ニーズに応えていくためにはどうしたらいいのだろうと、秋本さんはご苦労されているかなと思っています。

秋本:私たちの世代は、そもそも介護保険があるというところから始まっているので、それまでの違いで苦労するという経験はありません。ただ、介護保険ができてからは“自立支援”が基本になると思いますが、介護保険が始まる前の“療養上のお世話”という関わり方のまま今に至っている事業所も多い印象があります。

そもそも、私自身が大学生の時介護現場でアルバイトをしていた時は、“介護=お世話”だと思っていたのです。勉強して初めて、私の介護は古かったのだと気付きました。お世話することに一生懸命になるばかりで、ご本人の役割を奪ってしまっていたのだなと、振り返って反省しています。

蓮見:お年寄り一人一人みんな価値観が違うし、介護1つをとっても全部違うので、支援として難しい部分ですね。

秋本:私はそこが面白いなと思います。

蓮見:介護従事者の人間性とか価値観で、介護の質ややり方が凄く変わりますね。たまにメディアで現場の事故などがあると、世の中の視線もかわってしまうし、介護の人って皆そうなんだと思われてしまう。

秋本:メディアがそういうところしか取り上げないですからね。

蓮見:それが職業観にも繋がってくると、とても辛いですね。

秋本:介護職のイメージは残念ながら悪い状況です。毎年マイナビやリクナビが出している学生の就職したい業種別ランキングなどを見ていますが、2019年の調査で40業界中37位、大学生が就職の先として5%も検討していないというデータも目にしました。世間のイメージは強く影響していると思います。

蓮見:まず力仕事、賃金が低いこと、さくさくとビジネスライクにいかない等々、メディアでも仕事のネガティブなところが強調されていて、その働きがいがどうなのかであるとか、発展性・将来性が全く語られていません。これでは、良くなるわけがないですよね。プラスの部分も多く語っていくことが必要だと思います。

秋本:そうですね。今は介護職が不足していて、施設ではどこも採用に頭を悩ませていますが、介護業界の中でも採用活動をちゃんとやっているところは採用目標達成しています。介護だから採用厳しいと諦めて効果的な採用活動ができていない企業も多いので、私たちは個別支援やセミナー・採用実践力を向上するためのプログラムなどを通じて、実績を持ってまだまだ採用できることを証明して行きたいと思っています。

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蓮見:そもそもなぜ、そんなに若くして介護で起業しようと思ったのですか。

秋本:私は専修大学商学部卒で元々は介護には全然興味がありませんでした。山口県出身で、完全に都会に憧れて大学から東京に出てきました。大学1年生の時はひたすら遊んでいたのですが、何かしないと成長している感じがしなくて、2年生の時に起業サークルに入りました。チームで何か事業をやりながら学ぶスタンスで、第2希望のチームに入りました。そちらのテーマが認知症だったのが私の入り口です。

蓮見:なぜ認知症をテーマにしていたのですか。

秋本:メンバーの1人のおばあちゃんが認知症で、自分のことを忘れられた経験を持っていて、「認知症による悲しみを減らしたい」という強い想いを持っていました。その”想いに乗っかる形”でチーム活動を始めました。学生の頃は認知症の方と一緒に、コミュニケーションをとるためのフリーペーパーを作っていました。そこからもっと認知症のこと知りたいなと思い、大学3年から介護の現場でアルバイトを始めて、そこから介護にどっぷり入っていきました。

蓮見:どのような介護の現場だったのですか。

秋本:私が働いたところは小規模のデイサービスでした。宿泊もできるところです。現場自体はとても楽しかったのですが、課題はすごくたくさんありました。そういった課題を日々見る中で、どうやったら解決できるのだろうと漠然と思っていました。例えば、1人のおばあちゃんの「自分が生きていることが申し訳ない」って思っているような状況や、ご家族も介護と仕事の両立など経済的な理由に悩んでいたり、そもそも家族の関係性の問題も影響してきたりという状況でした。

同時にスタッフも、腰痛に悩む人や、所内のいじめなどですぐ辞めて、慢性的に人が足りない状態など含めて、たくさん課題があってどこから手付けていいかわからないくらいでした。

大学の時に3.11がありました。それをきっかけに周りの人たちが復興支援などの社会的貢献の活動を始めているのに、一方で介護領域に興味持っている人が少ないことに課題意識を持ちました。それは自分が商学部で、周りに介護領域に取り組む方がいない中で、課題意識を持つきっかけがあったからこそ感じられたのでないかと思い、半ば勢いと志だけで独立しました。

今、課題意識として強く持っているのが、一つはやはり担い手の不足です。今、介護事業所全体の約7割が人材不足であると答えていて、さらに今後“2025年問題”、 団塊の世代の方たちが後期高齢者の75歳以上になる年、現状のままだとあと55万人の確保が必要だと予想されています(出典:平成30年5月 第7期介護保険事業計画に基づく介護人材の必要数について)。また、介護職の離職率は16.2%。同年の全産業離職率14.9%と比べると一概に離職率が高いわけではありませんが、需要に応えるためには離職率も抑えてしまわなければいけません。(出典:介護労働安定センター「平成29年度 介護労働実態調査」)

蓮見:人材確保は喫緊の課題ですね。

秋本:中でも早期離職は大きな課題で、就職した人が3年で6割離職してしまう現状があります。志を持って入ったり、ちょっと興味持って入ったけれど、この業界で働くことを続けられない人たちが多いのです。それ故に、この業界自体がこれからますます深刻化するのにもかかわらず、一向に、課題解決力が高まらないことに、大きな問題意識を持っています。

もう一つは、この業界自体の疲弊感や閉塞感があること。課題の当事者でありながら、課題解決の実践者にはなれてない状況です。地域コミュニティの活性化に向けた取り組みや、高齢者の見守りプロジェクトなどいろいろと取り組みも生まれていますが、まだまだ足りないと感じています。

蓮見:それぞれの問題がリンクしていて、悪循環になっているのだと思います。だから、どこかから紐解いていかないとずっと悪循環が続きますね。秋本さんのこのJoin for Kaigoの活動は、みんな一人ひとり孤立してないで一緒に考えて、情報交換しい励まし合って、問題点も共有して皆でどうすればいいか考えて悪循環の輪が変えたいという想いで始められたのではないでしょうか。

秋本:そうです。課題がこれだけありますから、ひとつ一つ紐を解いて・・・。

 

1月掲載予定の中編へ続きます。
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秋本可愛(あきもと かあい)株式会社Join for Kaigo代表取締役

秋本可愛2019

平成2年生まれ。山口県出身。2013年、株式会社Join for Kaigo設立。若者が介護に関心を持つきっかけや、若者が活躍できる環境づくりに注力。日本最大級の介護に志を持つ若者のコミュニティ「KAIGO LEADERS」発起人。その取り組みが注目され、厚生労働省の介護人材確保地域戦略会議に有識者として参加。第11回ロハスデザイン大賞2016ヒト部門準大賞受賞。2017年より東京都福祉人材対策推進機構の専門部会委員に就任。第10回若者力大賞受賞。

■蓮見 孝 プロフィールはこちらから。