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いなかソンin南島原 アイデアソン開催レポ―ト

いなかソンin南島原が、現地でのアイデアソンとハッカソンの日程を終えました。

12月8日(木)19:00-21:30にTIP*S(東京・丸の内)にて、報告イベントを開催します。
南島原ITナイト@東京 Vol.2 「いなかソン in 南島原」開催報告会

このブログでも、振り返りをしていきます。
今回は10月に行ったアイデアソンの様子をご紹介します。

いざ、南島原へ

アイデアソンは、10月21日(金)~23日(日)の2泊3日で、南島原の現地を訪問しました。参加者は、東京・大阪・福岡などの大都市圏からのエンジニアのほか、地元近隣からお越しの方々を含め、総勢約30名。

現地では長崎空港で、市役所の小関さんや洗濯ハカセの神崎さんがお出迎え。神崎さんは、8月の東京でのプレイベントでもご登壇いただいていて、この日を心待ちにしてくださっていました。

大阪組の到着を待ち、バスに乗り込み出発。途中、諫早駅で福岡組を出迎え、いよいよ島原半島を南下し、現地へ。

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アイデアソンの仕掛け

アイデアソンというと、特定のテーマを掲げ、お題提供者のプレゼンがあったのち、アイデア創発のワークを行うスタイルが一般的ですが、今回はあえてそれを行いませんでした。

この3日間では、地域のあらゆる現場を見て、聞いて、体験し、地元の方々との対話や交流を、できる限り詰め込みました。

そうすることで、自分たちで地域の中から課題ややってみたいことを見つけ、問を立て、自分たちの技術で価値を表現していく。そんな自由度の高い仕立てにしていました。地域の土地や食、人や営みと、自分の感性が響きあうポイントが見えたら、それがテーマです。

この仕立てにできたのは、3つの理由があります。

1つ目は、1か月の間を空けて、もう一度現地を訪問できるから。テーマのかけらを見つけたら、持ち帰って考え、次の訪問で改めて現地で確かめることができます。

2つ目は、地元の熱意です。現地では、あらゆる人が参加者の来訪を快く受け入れてくれました。そこで生まれる関係を育むための3日間とすることで、息の長い取り組みとして深化する余地が生まれます。

3つ目は、豊富な素材。南島原には、農業、食、観光、歴史など、あらゆるコンテンツの素材に溢れています。できる限りの時間で、体験や交流を重ねることで、ITと掛け合わせた価値創出の可能性を、より多く見いだせます。

初日の体験コース

初日、最初の訪問先は、しいたけ栽培を手掛けている農事組合法人サンエスファームさんです。しいたけマイスターの今村マキさんのご案内で、しいたけを使ったメニューでのランチ、しいたけ工場の見学、収穫体験など、たっぷり味わいました。

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今村さんのお父様がはじめた事業が成長したプロセスなども伺いながら、参加者からは、しいたけのランチメニューの展開や、ITでの生産効率向上など、多くの質問が向けられました。

続いては、地元名産の手延べそうめんの生産者、有限会社ふるせを訪問。手延べそうめんの生産が広まったいきさつを伺い、そうめんの製造体験も行いました。自分たちで引いたそうめんは、その場で試食もさせてもらいました。

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島原半島でのそうめん生産量は全国2位とのことで、多くの事業者が地域で生産に励んでいるとのことでした。

初日の体験の様子は、地元ケーブルTV局のひまわりTVにご取材いただき、後日、番組で紹介されました。


生産者や市長を囲んでの交流会

初日の夜は、地元の方々との交流会。松本市長の乾杯にはじまり、地元の食や酒を堪能しながら、市長や生産者の方々との会話に華が咲きました。地元の方々ととにも、市長にも終了までお付き合いいただきました。

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交流会ののちも、参加者同士の2次会や、ITエンジニアとして勉強中の洗濯ハカセに向けたコードレビューなどもはじまり、長い夜が続きました。

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地域×ITとは?

2日目は、農業の生産者を訪問する予定がありつつも、あいにくの雨で圃場の視察はかなわず。時間調整もかねて、急きょ、出発前のホテルで地域×ITのかかわり方や考え方について、ミニ講義とディスカッションを行いました。

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ミニ講義では、以下のような話をしました。

・アイデアソン・ハッカソンで目指すも
目指したいアウトプットは、新たな価値を体験できるもの、ユーザがそのプロダクトに触れることで、どんな新しい体験をできるのか。それが、いままで得ることのできなかった価値や世界をどう示すのか。

・つくりたいものとほしいもの
作り手(エンジニア、クリエーター)が作りたいものが、使い手(南島原の人たちやユーザ)にとってほしいものになるのか。時としてギャップを生みますが、生み出す価値が見定まれば、それをどう表現するかは、作り手が自由に楽しみながら創造できる領域。自分たちの欲求に応えるのも、大切な視点。

・地域と仲良くなる/地域を好きになる
今回はアウトプットを出してお別れというよりも、2回の訪問を通じて、南島原の地域や人と仲良くなり、持続的にお付き合いできる気持ちが芽生えれば、お互いにとってよい結果と言える。地域で価値を生むプロセスは、長いつきあいの中で育てていく。

また、審査員としてご参加の木暮祐一さんより、青森県の下北半島での地域×ITの取り組み事例をお話しいただきました。木暮さんが准教授を務める青森公立大学のゼミでの実践から、地域への入り方や、ITでのインパクトなどについて、議論をしました。

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2日目の体験コース

午前中は、農業の生産者を訪問。天候不順のため、生産者の方が運営するお店の中でのヒアリングとなりました。

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最初の訪問先は、株式会社アリマート。トマトの生産や加工品販売のお話を伺いました。こちらではパイナップルの生産にも挑戦中で、オーナー制度の構想などもお話しいただきました。

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続いて訪問したのは、なばやま茶屋ひかり。イチゴの生産から、実家を改装したかき氷店を営むほか、民泊の実践など、地域の資源を活用した活動を幅広く展開。かき氷は絶品との評判で、遠方からの来客も絶えないとのことでした。

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昼食には、南島原市役所の近くにあるそうめん料理店で昼食。そうめんだけでも豊富なメニューがあり、参加者のみなさんは思い思いのメニューに舌鼓を打ちました。

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雨が小降りになった午後は、地元で開催中の「ありえ蔵めぐり」に参加。地元の酒蔵がイベント会場として解放され、地酒や野菜、加工品などの産品の購入や、屋台、ゲームコーナーなどもあり、蔵をめぐりながら、それぞれのコンテンツを楽しめる趣向あふれるイベントでした。

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参加者30名が各所に分かれて体験を楽しむ様子に、地元の方々の間でも話題になったそうです。

キャンプ場での交流

2日目は宿泊場所をキャンプ場「エコ・パーク論所原」に移し、再び地元の方々にお集まりいただいてディスカッションを実施。製麺業、農業、IT業、観光業の方々にお越しいただき、参加者のテーブルを回って、質問に答えていただきました。

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やりとりが一回りしたところで、バーベキューがはじまり、交流が続きました。この日は、地元の方々も深夜まで残り、宿泊先のロッジでお酒を酌み交わしながら、議論がやみませんでした。

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アイデア出し

ここまでは体験・交流がひたすら続く2日間でした。アイデアを出すタイミングは、次のように仕立てていました。

・移動時間でブレスト
訪問先への移動は、貸切バスを使いました。ひとつの訪問が終わるたびに、バスの中で隣の人と、訪問先で印象が残ったものを出し合い、ITでできることを1行書きでブレストを行いました。これを各地訪問するたびに行い、フラッシュアイデアを貯めていきます。

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・アイデアスケッチは宿題に
書きためたフラッシュアイデアをもとに、アイデアスケッチを書き起こしますが、こちらは2日目の夜から3日目の午前までの宿題として、各自で取り組むことにしました。深夜まで交流で盛り上がった方々には、朝、少しは早めに集合してもらい、書き出しの時間を設けました。

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チーム分けとアイデアの整理

3日目は、全員のアイデアスケッチを閲覧し、実現させてみたいアイデアを投票でピックアップ。抽出されたアイデアから、自分がやってみたいものを選び、チームをつくりました。

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その結果、今回は6チームに分かれました。

分かれたチームごとに、アイデアをブラッシュアップして、午後の成果発表に臨みます。

成果発表会

成果発表会では、松本市長のご挨拶ののち、6チームが各々の案を発表。各チーム、以下のようなアイデアが披露されました。チーム名とあわせてご紹介します。

チーム名:チームMST
「TOUCHで酒造り巡り」
酒好きの酒好きによる酒好きの為のログアプリ。
酒蔵情報や酒蔵に行ったとき、ラベルの写真と簡単な評価をすることにより、ログを残し、帰宅後も近所の酒屋や居酒屋でラベルの写真を取り、画像認識からどの酒蔵の酒か情報を取得できる。また、酒蔵でTouchでスタンプが集められる。酒蔵側としても顧客情報が取得できマーケティングに活用でき、観光客にも酒蔵にも双方にメリットのあるアプリ。

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チーム名:SS2Kids
南島原の子どもたちにITに興味を持ち、実際に使うようなプロダクトを作成する。その結果、子どもの周囲の人達にもITに親しむことができ、農業にIT技術を活用で生産力のUPをはかる。

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チーム名:栽培MEN
「簡単にできるプチ農園オーナー」
農園のオーナーの代わりに生産者は生産を請け負う。センサーやカメラを用いて、作物の画像やデータを収集し、オーナーには作物の画像を送り、作物の収穫は民泊と連携して収穫しに来てもらうか、配送する。オーナーは自分の農園で収穫できた特別な作物を得ることができ、生産者はIoTのランニングコストの削減やデータの活用等のメリットがある。

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チーム名:しぃそぅ
「C’est bon by Shimabara」
南島原の食材を体験してもらうことにより、海外への輸出のきっかけを作るためのWebプロモーションとアプリ。これにより、そうめんに続き、南島原の美味しい食材をヨーロッパに輸出させ、島原ブランドを確立させる。

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チーム名:チームAR
「よみがえる歴史AR」
位置情報から廃線となった電車の風景や原城をARで体験できる。ターゲットは外国人観光客も含め、多言語の解説が聞ける。コンテンツは地元学生ができるような機能を想定。

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チーム名:棚田愛
「一万石の棚田オーナー」
石垣のある棚田は棚田百選にも選ばれた「谷水棚田」を題材に、棚田のファンクラブを設立。農家とサポーターとオーナーで棚田を維持するためのサービス。定点カメラやドローンによる空撮をオーナーに届け、オーナーは田植えと収穫の時期に年2回の民泊ができる。それらの取り組みで、高齢化と跡継ぎ問題を解決をはかる。

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審査員には、以下の方々にお務めいただき、IT領域と地域の観点のそれぞれから、参加者へのコメントと質疑が行われました。

木暮祐一さん(一般社団法人ブロードバンド推進協議会
長谷川力也さん(NPO法人日本Androidの会
坂上英和さん(NPO法人コースター

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審査の結果、最優秀賞はチームMST「TOUCHで酒造り巡り」に送られました。

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帰路へ。そしてその後・・・

3日目の午後になって、ようやく青空が顔をのぞかせ、最後は晴天のもと、全員で集合写真を撮って、帰路へ向かいました。

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ここで参加者には、市からサプライズのお土産が。帰る直前まで感動を増幅させ続けた旅路となりました。

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帰ったのちも、早速、参加者の方々のアクションが続々と起こりました。しい・そうのメンバーは翌日には東京でミーティングを実施。その後もそうめんのメニュー開発を次々と行い、フランス人にもそうめんを食べてもらい、インタビュー動画の撮影を敢行。

棚田愛やチームMSTのメンバーも、現地の関係者とコンタクトを取り、アイデア実現への協力を呼びかけました。

東京や大阪では、参加者同士の交流の場も自主的に行われ、活発な活動が目立ちました。

アンケートから

アンケートでは、以下のような結果を得ました。
(一部抜粋)

Q:南島原市について新たな印象は生まれましたか?
多くの方から「はい」との回答をいただきました。具体的には、次のような声をいただいています。

・保守的な地域なのかな…と思っていましたが、新しい試みに取り組む方も多く、正直驚きました。
・南島原市に住む人達の温かさや、一生懸命さが伝わり、好きになりました。
・出身地でITが活用できるなんて思ってもいなかったです。
・来年から少しずつ、活動拠点を地元に移す一つの決心ができました。

Q:体験のコースについていかがでしたか?
こちらは回答が分かれました。今回は、通常のアイデアソンで行われるような、アイデア出しのためのまとまった時間でのワークを行う形式をとらず、現地での各種体験に時間を割いているため、体験によって得た発見や満足の声が多く挙がった一方、アイデア出しの時間を多く取りたかったという声もいただきました。

Q:アイデア出しについて
こちらは、対話や交流がアイデアにつながったという結果になりました。

テーマを特定せず、参加者が現地で感じた意識や観察、人々との交流を通じて、自ら発見することを目指したため、現地に寄り添ったアプリの開発を目指したいという声があったほか、一般的なアイデアソンのようにテーマを固定したものを望む声もありました。

まとめ

今回のアイデアソンの意義を、改めて以下のようにまとめました。

・地域の暮らしとテクノロジー・アイデアの融合
生活に利便をもたらすITは、近年、あらゆるテクノロジーが、多くのエンジニア、クリエータにとって扱いやすくなり、高度な技術を容易に使いこなせる状況となってきた。このことは、大企業によるスケールされたビジネスにならずとも、使い手と作り手が近接した環境で、小規模かつユニークなプロダクトを生み出せる環境が整いつつあることを意味します。

地域で暮らす使い手にとっては、自分たちの暮らしや産業を、テクノロジーとアイデアによって、より快適で個性的なものへと転換できる手段を得たことになり、作り手にとっては、使い手の声を間近で得ながら、新たな体験価値を生み出す力を伸ばす機会が到来したこととなる。

・地域での体験・交流から生まれる創発
今回は、東京、大阪、福岡などから参加者総勢27名が3日間を通して、南島原を実際に体験することで関心を深め、多くのアイデアが生まれた。成果発表会では優秀賞になったアイデア「TOUCHで酒造り巡り」をはじめ、他のアイデアに対しても南島原市長をはじめ、南島原市役所の方々から好評を頂き、ハッカソンへの期待を滲ませ。

都市部の作り手たちにとって、地域での体験・交流は、自らのアイデア・テクノロジーを発揮する機会の宝庫であり、都市の作り手と地域の使い手の交流が、双方にとって刺激となり、地域での価値創出に大きなエネルギーを生むことが、明らかになった。

・自走する人々
人は新たな環境で自分の力が発揮され、他者への貢献が適うときに、自発的に行動する意識が高まる。アイデアソン終了後に、参加者や地域の人々の間に、独自のアクションが生まれた。参加者の間では、現地で出会った人たちと連絡を取り合い、アイデアの実装に向けた行動が起こった。現地を対象とした追加取材の活動や、素材収集などが行われたほか、アプリ開発以外にも、食材の海外展開を目指し、外国人を対象としたヒアリングやメニュー開発などの動きも起こった。

また、東京・大阪で参加者間の交流イベントが自発的に行われた。 東京では、長崎県人が集うアンテナショップ「かきくけこ」で、参加者の自主企画による中間報告会が開かれ、市の担当者も交え、地元の酒や食を味わいながら、交流と意見交換が進んだ。

アイデアソンのレポートは以上です。

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次のレポートでは、11月のハッカソンの様子をお伝えします。

参加者のみなさん、地元の協力者のみなさん、ありがとうございました。

撮影協力:宮原徹(株式会社びぎねっと)

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報告イベントにもぜひご参加ください
南島原ITナイト@東京 Vol.2 「いなかソン in 南島原」開催報告会
※12/8(木)19:00-21:30 / TIP*S(東京・丸の内)にて開催
※どなたでもご参加いただけます

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