いなかソンin南島原 ハッカソン開催レポート
11月25日から27日までの2泊3日、長崎県南島原市にて「いなかソンin南島原」のハッカソンが行われました。
今回のハッカソンは、フィールドワークとハッカソン、そしてプレゼンテーションによって構成されました。
再び、南島原へ
10月のアイデアソンに引き続き南島原市に集結した参加メンバーは、早速前回結成したチームに分かれ、各々のアクティビティへと入っていきました。前回に引き続きフィールドワークを行うチームでは、車に分乗して南島原市内で生産者へのヒアリングや、視察に向かいます。また、既に取り組むべき内容が固まっているチームでは、滞在先のホテルにてそのままアプリ開発に着手し、本格的なハッカソンへと突入していきました。
視察に向かったチームのひとつ、南島原市が誇る風光明媚な「棚田」をテーマに取り上げたチームでは、棚田の視察に向かった先で、南島原市でドローンによる空撮ビジネスを行っている小田原さんに合流し、最新のドローン撮影システムによって上空から俯瞰する棚田の風景を垣間見ることにより、ハッカソンへの着想を練りました。その後は再び車で市内を移動し、農家の方へのヒアリングへ。
後継者問題など、南島原の農業が抱えるリアルな実情に触れるとともに、棚田を存続していくことの難しさを実感。果たしてITで棚田のために、そして南島原市のために何ができるでしょう?
帰り際、お話を伺った農家のご主人が目の前に広がる赤土を掘り返し、名産のじゃがいもをプレゼントしてくださいました。現地の方との、心温まる一コマでした。
みなさん、今回の「いなかソン」に期待してくださっているのだ…としみじみ感じました。
各チーム、視察を終えてホテルに戻ってきたところで夕食となりました。
初日の夜は、南島原市の主催による交流会が催されました。
市役所職員の方々も参加して、楽しい宴席の場となりました。ここでは、前回と今回の視察、フィールドワークなどを通じてお互いに感じたことを、参加者同士、そして市役所職員の方々と率直に意見交換しあう光景が見られました。交流会が終盤に近づくと、気づけばテーブルの上にはポツリ、ポツリとノートPCの姿が。
2泊3日のハッカソン、良いものを作るには時間の余裕がありません。楽しいひとときが過ぎた後は、いよいよ本格的なハッカソンの始まりです。
メンバーは各自、時間ギリギリまで宴会場を使ったり、あるいは宿泊部屋に移動して布団の敷かれた和室でコーディングをしたり、まだ作り上げるアウトプットが見えていないチームではホテルのロビーで喧々諤々の議論が交わされたり…。
深夜まで、各チーム各々の戦いが繰り広げられました。
ハッカソンは舞台を移して
2日目の朝は、気持ちのよい快晴でした。朝食後、昨晩の宴会場を借りてアプリ制作を開始。温泉旅館の宴会場が20余名のIT技術者とPCにより占拠されている様は圧巻。なかなか目にする光景ではありません。お座敷に響くキーボードの打鍵音。それでも豊かな南島原市の風土ゆえか、皆さんどことなくリラックスムード。
お昼まで、お座敷ワークは黙々と続けられました。
ホテルの食堂で昼食をとったら、各チーム車に分乗して、本日のハッカソンの舞台となる、エコ・パーク論所原に移動となりました。ここは10月のアイデアソンでも宿泊したキャンプ場で、今回も前回に引き続き2日目の宿泊場所となります。
30分ほどの移動中、山の中にあるエコ・パークに近づくにつれ気温は下がり、次第に空には厚い雲がかかっていきました。
エコ・パークに到着した一行は、ケビンと呼ばれる小屋に分かれて開発作業を続行します。
IoTデバイスの組み立てを行う人、プレゼン資料を作る人、コーディングをする人…他のチームの様子が見えない中、各チームはメンバーそれぞれに役割分担を決め、翌日のプレゼンに向けて追い込みをかけます。
この日の夕食はキャンプ場に相応しく(?)、手作りのカレー。カレーは事務局他、有志メンバーが他参加者が開発を行っている間にせっせと作りました。
棚田チームがもらってきたじゃがいももじゃがバターにして、さらには地元で美味しいと評判の唐揚げも振る舞われました。さらには、前回の交流会に参加してくださった地元の方から、蟹の差し入れがあり、なんとも贅沢な夕食となりました。
まるで学生時代の林間学校を思わせる、楽しい夕食の時間を終えたメンバーは、各々のケビンに戻り、翌日の成果報告会を目指し、深夜~明け方まで夜を徹しての開発作業が進められました。
山の中ということで夜は気温がぐっと冷え込み、小雨降りしきる中、ケビンの薪ストーブが作業するメンバーの顔を煌々と照らしていました。
そしてプレゼンへ
3日目の朝は昨夜からの雨が降る中、各自早々に朝食を済ませると、市役所の方や地元メンバーに出してもらった車で、再び初日のホテルに移動した。
ホテルの会議室が今回の「いなかソンin南島原」の決戦の場、プレゼン会場となります。
会場の前方にはプレゼンのためのスペースが用意され、真ん中より後方には、各チーム用のテーブル・椅子が用意されました。会場に到着するやいなや、瞬く間にテーブルにはPCをはじめとする各種機材が所狭しと広げられ、Hackな場が展開します。
昨晩は遅くまで作業を続けた各チーム。そして今はプレゼンの会場に入り、プレゼンが始まるその時間まで開発を続けます。
少しでもよいものを作り上げるために、とにかく時間が足りない…!
1分1秒を惜しみ、昼食を摂るのも忘れて、ただただ最後の仕上げに取り掛かりました。
成果発表
13時より、いよいよ「いなかソンin南島原」成果発表会が開会。
冒頭では南島原市長からご挨拶を頂き、今回のハッカソンへの期待が高まっていることが感じられました。市長の他にも行政のご来賓の方々や、見学に足を運んでくださった地元の方々に見守られる形で、各チームのプレゼンがスタート。
発表順は公正にくじ引きで決められました。
10月のアイデアソン、そして今回11月のハッカソンと、2度に渡る南島原への渡航と体験を通じて、感じたこと、思ったこと…その思いの丈をアプリやサービスの形に託して、各チームはプレゼンを行います。
勿論、限られた時間の中では全てが納得の行く形でのお披露目とはならなかったことと思います。想定していたデモが上手く動作しなかったり、アイデアはあるが動作できる状態にまで落とし込めていなかったり。それでも、足りない部分はアイデアを口頭で伝える形で、各チーム可能な限りベストを尽くしてのプレゼンでした。
南島原市に住んでいなければわからないことがある一方、現地に住んでいることで逆に見落としてしまう、南島原ならではの魅力。
今回、「外部」からやってきた参加メンバー一人一人のフィルターを通して、地元の人達にもきっと新たな発見があったことと思います。
さて、そんな「いなかソンin南島原」、見事ハッカソンを制したのは、特産品の手延べそうめんと、南島原への熱い想いを全開にしてプレゼンに臨んだチームしぃ・そぅ、あらための「フリーソーメン南島原」でした。
このチームの独創的だった点は、プレゼンが全て動画作品の上映、という形で行われたこと。アプリの製作だけでも大変な中、プレゼンそのものを動画作品化して製作・展開する力の入れようには、審査員も唸らされた。
また、チームメンバーは南島原そうめんの普及のために暗躍する「秘密結社フリーソーメン」のメンバーになりきって、プレゼン中に会場で実際にそうめんを振る舞うサプライズを決行。そうめんは、地元の池田製麺・池田さんに茹でて頂いたものを提供した。
「フリーソーメン南島原」の具体的な成果物は、南島原の各種そうめん毎の最適な茹で時間を記録したデータベース「島原コード」、そうめんのパッケージにあるバーコードを読み取って島原コードに照会することで製品ごとに異なる湯で時間を取得し、IoTデバイス「ソーメン博士初号機」から取得した温度と湿度をAPIで取得した補正値から正しいそうめんの湯で時間をセットする「ジャストソーメンタイマー(JST)」を作成。また、南島原のそうめんを普及させるための広報用Webサイト、「フリーソーメン南島原」を開設。
なお、当Webサイトではフリーソーメン南島原の活動やレシピの閲覧、将来的には生産者から情報発信も想定している。
この3日間ほとんど寝ずに作業したというメンバーの熱意、そうめんを無償配布する「フリーソーメン活動」を通じて南島原を確実に広めていける実行力、そして何より、メンバー一人一人が心より南島原とそうめんの普及を楽しんでいたことが印象的でした。
今回のハッカソン終了後に実施したアンケートでは、今後も自主的に再訪したいという声が6割を超え、成果物のブラッシュアップのほか、現地の人との交流を深めたい、知人を連れていきたいなど、人の交流を活発に行いたいとの声が多くあった他、仕事や生活の拠点として検討したいという声も2割程度に上りました。
成果物については、継続的に開発を続けたいという声が多数あがっているほか、新しいアプリやサービスを企画・開発したいという声が最も多く、引き続き、南島原をフィールドとしたアプリ、サービスを生み出したいという意欲が参加メンバーから見られました。
また、回答者の実に半数から、現地での実証実験を望む声もあがり、地域の受け入れ体制への期待も高い様子が伺えました。
10月、11月と2回に渡る現地でのアイデアソン/ハッカソンで構成された「いなかソンin南島原」は、今回のハッカソンの閉幕をもって無事に終了となりました。現地で行われたプレゼンの内容は、12月に東京の中小機構TIP*Sで開催された、「南島原ITナイト@東京Vol.2 開催報告会」にて、東京の方々にもお披露目となりました。
現地から帰ってきてからも、アプリ開発やそうめんの普及活動(フリーソーメン活動)が地道に継続し、そして現地生産者との絆が続いていることが、今回の「いなかソンin南島原」の、何よりの成果ではないかと思います。
この勢いが継続し、都市部から地方への移住・定住につながる大きなうねりにつながっていけばと思います。