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コラム:「共創の場」づくりについて

今、期待されるリビングラボ

「共創」によりイノベーションを生み出すことが、ワークプロセスの一つとして普遍化しつつある中で、その装置である「場」の有り方も変わっています。組織の大小を問わず、共創スペースやコワーキングスペース、シェアスペース等々と名を打って、今も次々と空間が生まれています。

ミーティング 俯瞰(©NOBU-stock.adobe.com)

 

4月に告知された国交省の「不動産ビジョン2030」の中でも、不動産事業者は今後、SDGsを見据えて、人の交流の場を活性することが必要であるとの提言も出されました。

振り返ると、私たちエイチタス自身も運営するプロジェクトのほとんどがクライアントの活動メンバーの皆さんと、プロジェクトに関連する専門家達の多様性ある複数のメンバーでチームを組んでアウトプットを導く「共創」のスタイルです。

 

■共創の「場」で、何をするか

共創の場は、今や「出会いの場」をこえて、戦略的に設計されたものにシフトしはじめました。例えば一つに、昨今多くみられる、イノベーションセンターは、自社の技術やリソースをオープンにして、外部共創によってイノベーションを生み出す場。従来の最新技術のスタティックで一方的な展示空間ではなく、自社の技術をオープンにすることによって、外部の知恵を取り入れる開発プロセスを実践し、プロダクトやサービスをつくりあげる機能を有します。

また、フューチャーセンターは、自社だけでは解決できない複雑な問題や社会課題を、専門分野が集まって垣根を越えて未来仮説や課題解決を図る場。そして、最近急速に注目されつつあるのが「リビングラボ」という機能です。

 

■リビングラボが担う役割とは、何か。

リビングラボは、企業、教育機関、行政が、実際にその地域の生活者と共に一体となって、これからのより良い社会の実現のために「共創」する場、そして活動をいいます。分かりやすくいうと市民参加型の共創活動。生活空間(Living)と研究室(Lab)を組み合わせた造語であり、約15年前より欧州が先導し各国政府も支援しており、現在では、世界で約400ヶ所のリビングラボが活動しています。

具体的には、リビングラボでは、対話の活性、関連情報の学び、ニーズ&インサイトの抽出(モニター制度)、プロトタイピング、実証実験、課題解決や製品サービスのアイディア創出等々の機能を持つことから、今、イノベーションを生むための、次のアプローチとして注目されています。

■なぜ「リビングラボ」が注目されるのか

前述のように、リビングラボは、調査、アイディア発想、企画、開発、プロトタイプ制作、評価、改善が一気通貫してできる場でありスキームですが、なぜ、これが今、注目されているのでしょうか。

理由は、3つ挙げられます。
一つは、課題の多様性です。解決する課題そのものが複雑で、企業毎や専門性、行政管轄をこえて、複雑で複数分野にまたがるようになっています。リビングラボのような複数のステークホルダーによる環境により、その解決が図りやすくなります。

二つ目に、企業側の求める情報イノベーションが「社会課題」にシフトしはじめていること。マスマーケティングや従来のPDCAを回すことでの新たな事業や製品の開発には限界がではじめ、今後のイノベーションは「社会課題」の中にこそ、そのヒントがあると考えられています。リビングラボはその組成からいっても個別のユーザニーズではなく、社会の困りごとが包括的に対話され浮彫りにされるので、社会課題を肌で感じて、正しい問いをつくりやすい環境にあると期待されているのです。

そして、最後にモノ&サービス開発の潮流から言及すると、デザイン思考やアジャイルといった新しいワークプロセス導入により、ユーザーの立場でものを考え、ユーザーの言語化できない期待値や困りごとを吸い上げて、いち早くプロトタイプを作りながら、スピーディに試行錯誤することが求められいるため、このリビングラボという複数のステークホルダーが集まる場は、その迅速さを担保できる場であると考えます。

■エイチタス仙台 リビングラボ

ひとつの事例ですが、私たちは、仙台で介護領域&仙台発のリビングラボを立ち上げようと活動しています。この活動は、仙台市の支援を受けつつ、今年で3年度にわたる取り組みです。

ブログ写真IMG_7575アイディアソン:介護従事者(ヘルパー、施設運営者、PT/OT)に、デザイナーやエンジニアリングが入って、介護現場の課題を解決するアイディアソン

 

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リビングラボの勉強会:仙台の介護発のリビングラボの創設のために、東北大学や行政、鎌倉リビングラボや横浜リビングラボのメンバーと情報を持ち寄り、あるべき未来を語る継続的な勉強会。

■生み出すチカラ、ファシリテーション

私たちのこの仙台の活動はじめ、共創の場づくりで実感されるのが、装置としての「場」のクオリティではなく、実は、ファシリテーションといえます。場のインフラ、参加者の優劣ではなく、どう進めていくか、その場に集まったメンバーの叡智をどう引き出してくか、は、ファシリテーションにかかっているのです。現在の共創の場の運営者への調査でも、未だ共創スペースの半数は場所を設けた後に製品・サービスは生まれていないとのヒアリング結果が確認されています。

キャプチャ画像

参照元:共有・共創型ワークスペースの実態調査 : 2016年度調査の概要報告|北海道大学学術成果コレクション HUSCAP https://hdl.handle.net/2115/66570 (最終閲覧日 2019年7月10日) 

その場で、新しい価値、ビジネス、製品を生むには、ステークホルダーの直近のゴールと、その場での全体のゴールをみすえ、毎回の会議やセッション、ワーキングで主体性をもって、各専門性をつなげるファシリテーションが、実は欠かせないのです。そこに「ひと」がいなくてはなりません。つまり、物理的な「場」以上に、ビジョンと意志と感情を共有できる「関係性の場」づくりが、もっとも大切なのだと実感します。(続く)

参考:「不動産業ビジョン2030」をおよそ四半世紀ぶりに策定|国土交通省https://www.mlit.go.jp/report/press/totikensangyo16_hh_000190.html(最終閲覧日 2019年7月10日)

次回、エイチタスの「関係性を生む場づくり」とは何か、どのように進めているかをレポートします。
掲載のお知らせをFacebookでいたします。
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